林道ツーリング初心者が最初に揃える装備の選び方|予算3案と買う順番

林道ツーリング初心者が最初に揃える装備の選び方|予算3案と買う順番

オフロードバイクを買ってしばらく経つと、舗装路だけでなく林道にも行ってみたくなりますよね。ですが、いざ未舗装の道へ入ろうとしたとき、装備のことで次のような悩みを抱える方は多いはずです。

  • 手持ちのオンロード用ヘルメットやジャケットのままで林道に入っていいのか不安だ
  • 林道デビューには色々と必要そうだが、何から買えばいいのか分からない
  • 一式を専用品で揃えると数十万円かかると聞いて、予算が心配だ

林道ツーリングの装備選びは、単なるおすすめ商品探しではありません。舗装路とは違い、電波の届かない山奥で転倒すれば、一人ではバイクを引き起こすこともできず、帰れなくなるリスクが伴います。だからこそ、やみくもに全身の専用品を買い揃えるのではなく、「身を守るために何が最優先か」を正しく理解して選ぶことが重要になります。

この記事は、個人の好みや感覚ではなく、客観的なデータに基づいて構成しています。警察庁が公表している二輪車の死亡事故データや、プロテクターが衝撃をどれだけ受け止めるかを定めた安全基準といった公的な物差しを使い、装備の優先順位を整理しました。

この記事では、オンロード経験はあるもののオフロードは初めてという方に向けて、林道初心者が「何を、どの順番で、いくらで」揃えるべきかを解説します。

最後まで読んでいただければ、手持ちのオンロード用装備の中でどれが流用できて、何は新しく買うべきなのかが明確になります。無駄な出費を抑えながら、安全に林道へ踏み出すための具体的な予算プランを組むことができるはずです。

結論からお伝えすると、最初に買うべき装備は「オフロードブーツ」「ニーシンガード(膝と脛を守るプロテクター)」「上半身プロテクター」の3点です。二輪車の死亡事故は頭部と胸部へのダメージで全体の約68%を占めますが、頭部を守るヘルメットは公道走行の要件が同じであるため、手持ちのオンロード用を当面そのまま流用して構いません。だからこそ、新しく予算を割くべきなのは、まだ守られていない「胸部」と、林道で最も怪我をしやすい「足」になります。

林道ツーリング初心者が最初に揃える装備は3点|まずここから

林道ツーリング初心者が最初に揃える装備は3点|まずここから の要点
これから林道ツーリングに挑戦する方に向けて、最初の一歩となる装備の選び方をお伝えします。
この章では、安全に林道へ入るために必要な知識と優先すべきアイテムの全体像を要約しました。
以下の内容について説明していきます。

  • オンロード装備のままでは林道に入れない理由
  • 林道がオンロードツーリングと決定的に違う4つの点
  • 最初に買うべき3つの装備
  • 装備を考える上での3つの階層
  • 本記事で扱うデータや価格に関する前提条件

手持ちの装備でどこまで行けるのか、まずは現在地を確認してみましょう。

オフ車を買って3ヶ月、オンロード装備のままでは林道に入れない理由

せっかくオフロードバイク(未舗装路も走れる二輪車)を買ったのに、舗装路しか走っていないという状況になっていませんか。
オンロードツーリングの経験は数年あっても、手持ちの装備で林道に入っていいのか迷うはずです。
普段使っているジェットヘルメットやメッシュジャケットのまま山へ向かうのは、正直なところ不安が大きいでしょう。

僕も同じような不安を感じるタイプの人間なので、その気持ちはよく分かります。
「この格好で転んだらどうなるのか」と想像すると、どうしても足が止まってしまうものです。

オフロード特有の装備がないと初心者だとバレてしまうのではないかと気後れするかもしれません。
ただ、本当に怖いのは見た目ではなく、怪我をして山奥から帰れなくなるという現実的なリスクです。
足りない装備をそのままにしておくのは、安全面で大きな懸念が残ります。

手元の装備が林道で使えるかどうかを判断するため、まずはオンロードとオフロードの違いを知ることから始めましょう。

未舗装・自走・電波なし|林道がオンロードツーリングと決定的に違う4点

林道と普段のオンロードツーリングでは、環境に4つの決定的な違いがあります。

  • 未舗装路であること
  • 山奥まで自走して行き、自走して帰ってくること
  • 携帯電話の電波が届かない場所が多いこと
  • 確実な地図がないことが多いこと

未舗装の道は足元が不安定で、舗装路よりも転倒する確率が跳ね上がります。
さらに、林道まで自力で運転して向かい、体力を消耗した状態で再び自力で帰宅しなければなりません。
トランポ(バイクを積載して運ぶ車)を使わない自走ライダーにとって、怪我はそのまま帰還不能を意味するからです。

「もし山の中で転んで動けなくなったら?」
電波がなければ助けを呼ぶこともできず、単独行動であれば致命的な事態に直結しかねません。
そのため林道では、万が一の転倒でも自走して帰れるだけの強固な守りが必要不可欠と言えます。

結論|ブーツ・ニーシンガード・上半身プロテクターの3点から買う

林道ツーリングの装備として、最初に買うべきアイテムは以下の3点です。

  • オフロードブーツ
  • ニーシンガード(膝と脛を守るプロテクター)
  • 上半身プロテクター(胸部や背中を守るもの)

この3点が最優先される理由は、転倒時に最も怪我をしやすい足元と、死亡リスクに直結する胸部を守るため。
頭部を守るヘルメットは公道走行の法的要件が同じなので、ひとまず手持ちのオンロード用を流用して構いません。
新しく予算を割くべきなのは、現在何も守られていない胸と、林道で最も壊れやすい足の2箇所になります。

もちろん、最初からすべてを完璧に揃える必要はありません。
今月はこの優先度の高いアイテムを買い、残りは次の給料日に回すといった段階的な購入でもOKです。
まずはこの3点を揃えることで、安全に林道を走るための最低限の土台が完成します。

装備は3層で考える|身につける・車両につける・携行する

林道の装備は、役割に応じて3つの階層に分けて考えると全体像が掴みやすくなります。

  • ライダーが身につける装備(プロテクターやウェア類)
  • 車両側につける装備(ハンドガードなどの車体保護パーツ)
  • 携行する装備(工具やパンク修理キットなどの持ち物)

多くの人は身につける装備ばかりを気にしますが、それだけでは不十分です。
車体を守るパーツやトラブルに対処する工具がなければ、自走して帰るという目標を達成できません。

例えるなら、身につける装備が城の「城壁」なら、携行する装備は城を修復する「大工道具」のようなものです。
どちらが欠けても、林道という過酷な環境を生き抜くことは難しくなるでしょう。
この3層のバランスを取ることで、初めてリスクを網羅的にカバーできる体制が整うわけです。

先に断っておく前提|林道限定の事故統計は存在せず、価格は2026年8月15日時点

本記事を読み進める前に、いくつかお伝えしておきたい前提条件があります。
まず、林道やオフロード走行に限定した二輪車事故の公的統計というものは存在しません。
交通事故の統計は一般道と高速道路の区分で集計されており、林道は独立した項目になっていないためです。

そのため、記事内で紹介する死亡寄与率などのデータは全国の二輪車事故全体の数値を用いています。
「林道では必ずこうなる」という断定はできない点をご理解ください。
また、紹介している実勢価格は2026年8月15日時点でメーカー公式や正規輸入元にて確認したものです。

安全規格についても、JIS T 8133(日本産業規格の乗車用ヘルメット規格)が2026年3月23日に改正されました。
SGマーク(製品安全協会の認証基準)の旧基準併存期限は2027年3月末日のため、購入時期には注意しましょう。

林道ツーリングの装備は「守る部位」で買う順番が決まる

林道ツーリングの装備は「守る部位」で買う順番が決まる の要点

競合記事の順番が3派に割れていて、理由が書かれていない現実

林道ツーリングに向けて何から装備を揃えるべきか調べると、情報元によっておすすめする順番が大きく異なります。
ウェブ上の記事を比較したところ、優先順位は大きく分けて以下の3つの派閥に割れていました。

・ライダーの装備を優先する派(from experience、ダートバイクプラス、kurashi-no、あおぶさなど)
・車両側の装備を優先する派(アドベンチャーレオなど)
・トラブルへの対処手段を優先する派(webオートバイなど)

このように意見が分かれているうえに、どの記事も「なぜその順番で揃えるべきなのか」という明確な理由を示していません。
何から手をつければよいか迷うのは、この「客観的な根拠の不在」が原因です。限られた予算を有効に使うためには、個人の感覚ではない客観的な物差しが必要になります。

警察庁データ|死亡時の損傷部位は頭部37.9%・胸部30.2%で全体の68%

客観的な物差しとして最も信頼できるのは、死亡事故における損傷部位のデータです。

警察庁が発表した「損傷主部位別二輪車乗車中死者数(令和3〜7年合計)」によると、総死者数2,369人のうち、致命傷となった部位は以下の通りです。

損傷部位 死者数
頭部 897人(37.9%)
胸部 715人(30.2%)
頸部(首) 193人
腹部 137人
腰部 93人
脚部 53人
腕部 5人

頭部と胸部の合計だけで1,612人となり、全体の約68.0%を占めています。
つまり、ライダーの命を奪う原因の約7割が頭と胸へのダメージだということです。装備を買う順番で迷ったときは、この「死亡寄与率の高い部位から優先して守る」という基準が最も確実な答えになります。

この統計は全国の二輪車データ|「林道ではこうなる」と読み替えない

ただし、ここで一つ重要な注意点があります。
先ほど紹介した警察庁のデータは、全国の一般道や高速道路で発生したすべての二輪車事故を集計したものです。

前述の通り、林道やオフロードでの走行に限定した公的な事故統計は存在しません。そのため、このデータをそのまま「林道でも全く同じ割合で頭や胸を打つ」と読み替えることはできません。
未舗装路での低速転倒と、舗装路での高速走行中の事故では、怪我の傾向も異なります。

それでも、人体において「ダメージを受けると致命傷に直結する急所」が頭と胸であるという事実自体は、走る場所が変わっても揺らぎません。
林道特有のデータがない以上、全国の統計が示す「守るべき部位の重要度」を基準にすることが、現時点で最も理にかなった選択と言えるでしょう。

経験者3人が語る優先順位|ブログ・ツアー主催者・ショップで何が違うか

統計の次は、実際に現場をよく知る人たちの意見を見てみましょう。
林道ツーリングの経験者や専門家が語る優先順位には、それぞれの立場や重視するポイントによって明確な違いがあります。

・個人の体験ブログ(めにほびさん):
ブーツを最優先とし、次にプロテクター、ヘルメット&ゴーグル、グローブ、最後にパンク修理キットという順序を提案しています。身体の保護を一番に考える王道のアプローチです。

・ツアー主催者(アドベンチャーレオさん):
ハンドガードやアンダーガードといった車両の保護部品(転倒時にレバーやエンジンを守るパーツ)を真っ先に挙げます。次いで予備クラッチレバーと工具、その後にブーツとシンガード(すね当て)が続きます。「山の中でバイクが動かせなくなるリスク」を最も恐れていることが分かります。

・バイク用品店(ライコランド柏店さん):
初心者に対して「まずは膝だけでもつけて行かれることをお勧めします」と助言しています。林道では足元が不安定になりやすく、転倒時に真っ先に膝を打ちやすいため、最低限の出費で最大の効果を得るための実践的なアドバイスです。

身体を守るか、車両の自走不能を防ぐか、あるいは最も怪我をしやすい部分をカバーするか。立場によって正解の形が変わるのが実情です。

まず買う・次に買う・後回しでよい|3段階に落とすとこうなる

統計データによる「命に関わる部位」と、経験者たちの「現場でのリスク」を掛け合わせると、装備を揃える順序は3つの段階に整理できます。

第1段階は「まず買う」装備です。
もし「まず1点だけ買うなら何が良いか」と問われたら、ショップの助言通りニーシンガード(膝とすねのプロテクター)を選んでください。最も頻繁に転んで打つ場所だからです。そして、死亡リスクに直結する胸部プロテクター(ルーストデフレクターと呼ばれる飛び石などを防ぐ上半身用の防具も含む)と、操作性や足首の保護に直結するオフロードブーツ。この3点が最優先となります。ヘルメットはひとまず手持ちのオンロード用で代用しても構いません。

第2段階は「次に買う」装備です。
本格的なオフロードヘルメットやゴーグル、専用のグローブやウェア、そして荷物を積むためのシートバッグなどがここに入ります。これらは林道ツーリングをより快適にし、疲労を軽減するために役立ちます。

第3段階は「後回しでよい」装備です。
予備のレバーやパンク修理キットなどの携行工具類は、単独行動を避けて経験者と一緒に行くのであれば、最初は仲間に頼るという選択もできます。

まずは第1段階の「ブーツ、膝、上半身」から確実に揃えていきましょう。

装備の選び方は「規格表示」で決まる|CE・JIS・PSCの読み方

装備の選び方は「規格表示」で決まる|CE・JIS・PSCの読み方 の要点
どの部位から守るべきかが分かったら、次は「どの製品なら確実に守ってくれるのか」を判断する物差しが必要です。値段が高ければ安全だとは限りません。ここで頼りになるのが、製品が公的な試験をクリアしたことを示す「規格表示」です。ここでは、ヨーロッパの安全基準であるCE規格や、日本のヘルメット規格(JIS、PSCなど)をどう読み解けばいいのかを解説します。

EN1621は打撃を受け止め、EN17092は滑って破れない|片方だけでは不十分

バイク用の安全装備を選ぶ際、特に目にする機会が多いのが「CE規格(EU加盟国の基準を満たすことを証明するマーク)」です。これはヨーロッパの厳しい安全基準をクリアしたことを示すもので、日本のバイク用品でも広く採用されており、客観的な安全性の目安になります。

このCE規格の中で、林道ツーリングの装備選びの基本となるのが「EN1621」と「EN17092」という2つの基準です。

EN1621は、転倒して地面や岩に体を打ち付けた際、その「打撃を受け止める性能」を保証する規格です。主にプロテクター類に適用されます。一方、EN17092は、転倒後に路面を滑走した際、ウェア本体が摩擦に耐え、「滑って破れない性能」を保証するものです。こちらはジャケットやパンツといったウェア類に適用される基準となっています。

ここで重要なのは、この2つは役割が違う補完関係にあるということです。打撃に強くても摩擦で破れてしまっては皮膚を守れず、摩擦に強くても打撃の衝撃は骨に達してしまいます。安全を確保するためには、片方だけでは不十分だということを覚えておいてください。

プロテクターのCE規格|EN1621-1は35kN未満、EN1621-2は18kN未満

プロテクターの打撃吸収性能を示すEN1621には、守る部位によってさらに細かな分類があります。

手足の関節(肩、肘、膝など)を守るための規格が「EN1621-1」です。2012年に定められたこの基準では、試験機で衝撃を与えた際、プロテクターを通り抜けて人体に伝わる力(透過力)の平均が35kN(キロニュートン)未満、単一の最大値でも50kN以下に抑えられていることが求められます。

背中を守る脊椎プロテクターには「EN1621-2」が適用されます。こちらは2014年の基準で、平均18kN未満、単一で24kN以下と、関節用よりもさらに厳しい衝撃吸収力が要求される仕組みです。また、胸部プロテクターの規格である「EN1621-3」も存在します。

これらの規格には「Level 1」と「Level 2」という等級が設定されていることがあります。数字が小さいほど人体に伝わる力が小さいことを意味しており、Level 2のほうが保護性能が高いという目安になります。

グローブ・ブーツ・ウェアの規格|Level2で衝撃保護が必須になるのはどれか

プロテクター以外の身につける装備にも、それぞれ専用のCE規格が定められています。

グローブに適用されるのは「EN13594」という規格です。転倒時に手からすっぽ抜けにくいか(拘束性)や、手首を覆う長さ(カフ長)などが試験されます。この規格でもLevel 1とLevel 2があり、Level 1では手の甲にあるナックル部分の衝撃保護は任意ですが、Level 2になると衝撃保護が必須条件になります。

オフロードブーツ選びの基準となるのが「EN13634」です。耐摩耗性や耐切創性に加え、靴底の横方向への剛性や、足を覆う筒部分(アッパー)の高さも評価項目に含まれます。林道でバイクの下敷きになった際、足首が横に曲がって骨折するのを防ぐためには、この横方向の剛性が重要になるわけです。

ウェア類に適用される「EN17092」は、Darmstadt(ダルムシュタット)法と呼ばれる衝撃摩耗試験などを経て、保護性能が高い順にAAA、AA、A、B、Cというクラスに分けられます。

ヘルメットは法令要件と性能規格を分けて読む|PSC・JIS・SNELL・ECE

ヘルメットを選ぶ際は、法律で定められたルールと、メーカーが自主的に取得する性能基準を分けて考える必要があります。

日本の公道を走るために絶対に欠かせないのが「PSCマーク(消費生活用製品安全法に基づく特定製品のマーク)」です。これは耐衝撃性やあごひもの強度などの技術基準を満たしていることを示し、このマークを表示していなければ日本国内で販売自体ができません。

性能の目安として最も一般的なのが、日本の国家規格である「JIS規格(日本産業規格:JIS T 8133)」です。衝撃吸収性や耐貫通性、シールド強度、保持装置(あごひも)強度、脱げにくさという5つの性能を保証しており、2026年3月に最新の改正が行われました。

他にも、人身事故時に最高1億円の賠償措置がつく「SGマーク(製品安全協会)」や、約5年ごとに改訂されるアメリカの厳しい規格「SNELL(スネル記念財団の規格:公道対応のM2025Dなど)」、回転しながら加わる衝撃の評価を初めて導入したヨーロッパの規格「ECE 22.06」などがあります。

なお、「MFJ公認(日本モーターサイクルスポーツ協会の公認)」というマークを見かけることがありますが、これはレースに出場するための競技規則上の要件です。公道走行の法的要件ではないため、林道ツーリングにおいては必須ではありません。

規格表示はどこで確認するのか|店頭のPSC表示とメーカー公式ページ

では、これらの規格は購入時にどうやって確認すればよいのでしょうか。

まず、販売が法的に規制されているPSCマークについては、店頭に並んでいる段階でヘルメットの目立つ場所に必ずシール等で表示されています。SGマークもこれとセットで貼られていることがほとんどです。

一方、プロテクターやウェアのCE規格(EN1621など)は、製品のタグに印字されていることもありますが、事前の確認ならメーカー公式や正規輸入元の製品ページを見るのが確実です。

例えば、公式ページの商品説明欄に「背中は独自取得した欧州CE規格モデル」「胸部はCE認定のハードプロテクター」「スネル・JIS」といった記載があれば、その製品は公的な試験をクリアしていると判断できます。なんとなくの見た目や価格だけで選ぶのではなく、こうした客観的な規格表示を物差しにして装備を比較してみてください。

最初に買う3点の選び方|ブーツ・膝・上半身プロテクター

最初に買う3点の選び方|ブーツ・膝・上半身プロテクター の要点
規格で選ぶべき装備が分かったところで、ここからは真っ先に揃えるべき3点の具体的な選び方を見ていきましょう。
限られた予算を最も効率よく安全に変えるため、以下の3点から選ぶ手順を解説。

  • オフロードブーツの硬さとサイズの選び方
  • 膝を守るニーシンガードの特徴
  • 飛び石から胸を守るプロテクターの重要性

それぞれ、買い間違いを防ぐための具体的な確認点をまとめました。
初心者が陥りやすい失敗パターンも交えてお伝えします。

オフロードブーツは最優先|モトクロス用・エンデューロ用・トライアル用の硬さの差

林道へ入るなら、何よりもまず専用のオフロードブーツを用意してください。
専用ブーツでなければ防げない怪我があると言えます。
欧州の安全規格(EN13634)では、耐摩耗性だけでなく靴底の横方向の剛性や靴筒の高さも試験の対象。

足首が横にねじれる動きを制限しなければ、転倒時にバイクと地面に挟まれたまま引きずられ、関節を骨折する危険があります。
安全長靴や普通の登山靴にはない保護性能ではないでしょうか。

ただし、専用品なら何でもいいわけではありません。
競技向けに作られたモトクロス用のブーツは硬く、ギプスのように足首が固定される製品も存在。
シフトやブレーキのペダル操作が困難になり、初心者が林道で履くと苦労するとの声をよく耳にしました。

操作性を重視するなら、ソールが波型でグリップしやすく、やや柔らかめに作られたエンデューロ用が適しています。
歩行を前提としたトライアル用はさらに柔軟に作られているため、自分の走り方に合わせて選んでみてください。

ブーツのサイズ選び5つの確認点|厚手ソックスなら1サイズ上げる

ブーツを買う際は、念のためと適当に大きめを選ぶのは避けるべきと言えます。
サイズが合っていないと足が靴の中で遊び、正確なペダル操作ができません。
購入時には、必ず林道で実際に履く予定の厚手ブーツソックスを持参して試着を行ってください。

普段の靴のサイズがそのまま通用しないことも珍しくありません。
アメリカのブランドは比較的普段履きに近いサイズ感ですが、ヨーロッパのブランドは幅が狭めに作られている傾向。
人によっては1〜2サイズ上げる必要が出てきました。

厚手ソックスを履いた状態で、甲の高さや幅、ふくらはぎの太さ、左右差など5点をシビアに確認しましょう。
コミネ「BK-065」は25.0〜28.0cm、ガエルネ「ED-PRO」は24.5〜29cmまで展開されています。
店頭での入念なフィッティングを欠かさないでください。

ニーシンガードとニーブレースの違い|価格差が最大40倍になる理由

膝を守る装備には、大きく分けて「ニーシンガード」と「ニーブレース」の2種類が存在。
初心者が最初の1点として選ぶなら、膝と脛(すね)を衝撃から守るニーシンガードで十分対応できます。
ニーシンガードは3,000円から2万円程度で購入できる基本的なプロテクターと言えます。

欧州規格(EN1621-1)では打撃を受け止める性能を厳しく試験。
転倒時の衝撃だけでなく、前輪が跳ね上げた石の直撃からも足を守ってくれました。

ニーブレースは5万円から13万円以上と高額。
高額な理由は、単なる衝撃吸収だけでなく、膝関節が横に曲がったりねじれたりするのを機械的に防ぐ構造を持つためです。
価格差が最大40倍近くになるのは、この高度な関節保護機能によるものでしょうか。

足の形は人それぞれであり、サイズを間違えると全くフィットしません。
まずはニーシンガードを装備し、林道のペースに慣れてきてから必要に応じてニーブレースを検討してみてください。

胸部プロテクターは死亡寄与率2位なのに着用率9.9%|飛び石から守るもの

ブーツと膝の次に優先すべきは、胸部プロテクター(ルーストデフレクター)と言えます。
警察庁の統計によると、二輪車乗車中の死亡事故において、胸部は頭部に次いで全体の30.2%を占める致命傷部位。
それにもかかわらず、警視庁の街頭調査における胸部プロテクターの着用率はわずか9.9%に留まっていました。

林道では、転倒してハンドルや岩に胸を強く打ち付けるリスクが常に伴います。
前を走るバイクが跳ね上げた直径20センチ近い石が飛んでくることもあり、集団走行中は痛くてもすぐには止まれません。
胸部の規格(EN1621-3)では、局所的な打撃を分散して受け止める性能が求められるのではないでしょうか。

コミネの「SK-694」のようなCE認定のハードプロテクターを内蔵したベストなら、1万円台前半で背中と胸を同時に保護。
死亡寄与率の高い部位を優先して守り、予期せぬ衝撃に備えてください。

次に揃える装備5つ|ヘルメット・ゴーグル・グローブ・ウェア・積載

次に揃える装備5つ|ヘルメット・ゴーグル・グローブ・ウェア・積載 の要点
林道ツーリングで最優先となる3点を揃えたら、次は快適性と補助的な安全性を高める装備への着手です。
ここでは次に揃えるべき5つのアイテムについて、選び方と実勢価格の目安を解説しましょう。

  • オフロードヘルメットの必要性
  • ゴーグルとシールドの選び分け
  • グローブの安全規格
  • ウェアの代用可否
  • 積載方法の使い分け

どれもオンロード用とは求められる性能が異なるため、林道ならではの選定基準を押さえておきたいところ。

オフロードヘルメットは本当に必要か|高速道路を自走するなら話が変わる

頭部を保護する乗車用ヘルメットの法的基準は、公道走行においてオンロード用もオフロード用も共通です。
手持ちのジェットヘルメット等でも、法令上は林道に入れます。
ただし、オフ車特有の激しい動きや発汗を考慮すると、専用品の通気性と軽さが強みになるでしょう。

価格帯としては、SHOEIのHORNET ADVが67,100円、AraiのTOUR-CROSS Vが71,500円ほど。
気をつけたいのは、ヘルメットの寿命に関する通説です。
「寿命3年」はSG基準の有効期間、「10年」は日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)の推奨を指します。
公的な物理的耐用年数の規定は存在しません。

高速道路を頻繁に走る場合は、バイザー付きヘルメットのデメリットも理解しておく必要があります。
走行風でバイザーが煽られ、頭が後ろへ持っていかれそうになる感覚が生じるためです。
林道だけでなく高速での長距離移動も想定するなら、風切り音や空気抵抗を抑えたモデルを検討しましょう。

ゴーグルかシールドか|曇りにくさを取るか、雨と飛び石を防ぐか

オフロードヘルメットの視界確保には、ゴーグルとシールドの2通りが存在します。
ゴーグルの最大の強みは、林道での激しい運動でも自らの息で曇りにくい通気性です。
軽量さも相まって、体力を消耗する未舗装路で重宝するでしょう。

一方でシールド付きヘルメットは、雨や風、寒さへの耐性に優れています。
前走車からの飛び石や虫の直撃も防げるため、長距離を走るならデュアルパーパスタイプが便利。
ゴーグルの場合、雨が降れば吹き込みがあり飛来物も容赦なく入ってきます。

ゴーグルの実勢価格は、ACERBISのVITRIONクリアレンズが7,150円ほど。
上位モデルのVULCANローライトレンズになると、17,600円程度で購入できます。
林道での運動量優先か、オンロード区間を含めた快適性優先かで選び分けましょう。

グローブは規格で差がつく|手から抜けない拘束性とナックル保護

林道向けのグローブは、欧州の安全規格であるEN13594の認証有無が一つの選定基準になります。
この規格では、転倒時に手からグローブが抜けないかを示す拘束性が評価対象。
レベル1で25N、レベル2で50Nの力に耐えることが求められます。

さらにレベル2では、拳部分(ナックル)の衝撃保護が必須要件です。
オンロード用グローブを流用できるか迷う際は、このナックル保護の有無が判断材料となるでしょう。
林道では木の枝や飛び石など、手に直接当たる障害物が少なくありません。

実勢価格はコミネのGK-2475が6,490円、ACERBIS製品が8,690円前後。
操作性を重視して薄手のモトクロス用を選ぶ場合、プロテクション機能は最小限になります。
グローブは消耗品と割り切り、安全性と操作性のバランスで選び直していくのも一つの手です。

ウェアは専用品か代用か

林道で着るウェアに求められる基本要素は、汚れてもよいこと、洗えること、そして速乾性です。
専用のモトクロスジャージは、膝や尻部分の補強、調整可能なウエストバンドなど耐久性に優れます。
価格の目安として、ACERBIS製品でジャージが5,500円から、パンツは15,950円程度。

専用品が必須というわけではありません。
プロテクターを別体で着込むのであれば、通気性のあるスポーツウェアで代用できます。
汚れてもよく、洗えて乾きやすいという条件さえ満たしていれば、まずはそれで十分です。

予算を抑えたい段階では、動きやすさと速乾性を満たす手持ちの衣類から始めることも可能です。
林道では雨具も実質的に必携となるため、代用品で浮いた予算をレインウェアへ回すのも賢明。
自分に合ったペースで、少しずつ専用装備へ移行していきましょう。

積載はリュックか車体か|舗装路はキャリア、林道だけ背負うという併用案

未舗装路へ入る際の荷物運びは、車体への積載と背負うリュック(バックパック)の併用が現実的。
リュックに重い荷物を入れて走り続けると、予想以上に腰への負担がかかります。
狭い道では標識や木の枝に引っかかり、転倒につながるリスクも無視できません。

舗装路の移動区間はキャリアにバッグを固定し、林道区間に入るときだけ背負う方法が有効。
バックパックの重みで車体のリアが上下し、バランスが悪くなるのを防ぐ効果があります。
シートバッグの実勢価格は、TANAXのMFK-251(19〜27L)が17,050円前後です。

注意点として、バックパックは背中プロテクターの代わりにはなりません。
転倒時の衝撃から脊椎を守る機能はないため、プロテクターは必ず別で着用してください。
また夏の熱中症対策には、ペットボトルより背負ったままチューブで給水しやすいハイドレーションが重宝します。

林道ツーリングで車両側に必要な装備と携行品|自走不能を防ぐ5点

林道ツーリングで車両側に必要な装備と携行品|自走不能を防ぐ5点 の要点
身につける装備を揃えたら、次はバイク本体への備えです。
ライダーが無傷でも、バイクが動かせなくなれば林道から自力で帰還できません。
ここでは自走不能を防ぐための対策を解説しましょう。

  • 車両を守るガード類の必須装備
  • 最優先で携行すべき予備レバー
  • パンク対応の実装備
  • チューブタイヤ特有の落とし穴と注意点

以上の備えはすべて、山の中で孤立しないための重要な対策となります。

ハンドガードとアンダーガードは「非交渉の必須改造」と言われる理由

林道ツーリングにおいて、車体へのガード類追加は避けて通れません。
オフロードバイク向けのツアー主催者からは、ガード類を非交渉の必須改造と位置づける声も聞かれます。

ハンドガードはナックルガードとも呼ばれ、手やレバーを木の枝などから守るパーツ。
アンダーガードはスキッドプレートとも呼ばれ、エンジンの下部を岩などの衝撃から保護します。
どちらも、破損すれば即座に自走不能に陥る重要な部位を守る役割を担う装備と言えます。

林道に飛び出している枝や、前輪が跳ね上げた石の破壊力は想像以上でしょう。
ライダー自身の装備だけでなく、バイクの急所を物理的に守る対策が必要です。

予備クラッチレバーを最優先で持つ|低速の転倒でもレバーは折れる

携行品の中で最も優先順位が高いのが、予備のクラッチレバーと交換用の工具です。
林道では、スピードが出ていない低速での転倒でも簡単にレバーが折れてしまいます。

ブレーキレバー以上に深刻なのが、クラッチレバーの破損。
クラッチが操作できなくなると、実質的にバイクを動かせなくなります。
電波の届かない山奥で破損事態に陥ると、完全に孤立してしまうでしょう。

交換作業には車載工具が必要になります。
デイトナの車載工具Aセット(14ピース・3,080円)などを準備しておくと安心です。
工具はすべて一人で揃えず、一緒に走る仲間と役割分担するのも賢い方法と言えます。

パンク対応の実装備|前後チューブ・タイヤレバー・米式バルブ対応ポンプ

未舗装路を走るうえで、パンク対策の備えは欠かせません。
前後タイヤ分の予備チューブと、米式バルブ(自動車と同じ形式の空気注入口)に対応した携帯空気入れは必ず持参しましょう。

タイヤレバーやエアゲージ(空気圧を測る計器)、エマージェンシーサイドスタンド(修理時に車体を浮かせるつっかえ棒)も必要です。
デイトナのタイヤレバーセット(4,180円)などが選択肢に入ります。
かつてはパッチを貼る修理が一般的でしたが、現在はチューブごと交換する対応が基本。

もしチューブ交換の経験がない場合は、出発前にショップで手順を習っておきましょう。
現場で初めて作業を試みるのは、あまりにも高いリスク。

チューブかチューブレスか|修理キットが使えない落とし穴に注意

パンク対策グッズを選ぶ際、絶対に間違えてはいけないポイントがあります。
自分のバイクがチューブタイヤなのか、チューブレスタイヤ(中にチューブを持たないタイヤ)なのかの違い。

多くの林道向けオフロードバイクは、中にチューブが入っているタイヤを採用しています。
しかし市販のパンク修理キットの中には、チューブレス専用のものが少なくありません。
デイトナのパンク修理キット(5,500円)は、公式に専用品と明記されています。

チューブタイヤのバイクにチューブレス用のキットを持っていっても、全く役に立ちません。
購入前には必ず、自分の車両の仕様と製品の適合を確認してください。

タイヤレバーは先端3分の1だけ|修理作業が新たなパンクを生む

いざ林道でパンク修理を行う際、作業自体が新たなトラブルを引き起こすことがあります。
代表例が、タイヤレバーの不適切な使い方によるチューブの損傷。

タイヤをホイールから外す際、レバーを奥までグイッと差し込んではいけません。
深く差し込むと、中でチューブを巻き込んでしまい、新しい穴を開けてしまいます。
正しい使い方は、タイヤレバーの先端3分の1程度だけを浅く差し込むことです。

焦っている時ほど、力任せに作業を進めてしまいがちになるので注意しましょう。
慎重な工具の扱いが、無事に帰還するための大きな鍵となります。

オンロード用装備の流用可否と総額|予算別3プランで揃える

オンロード用装備の流用可否と総額|予算別3プランで揃える の要点
手持ちのオンロード用装備は、林道へそのまま持ち込めるのでしょうか。
装備の流用可否は、個人の感覚ではなく、客観的な安全規格であるCEやJISの表示を基準にすれば明確に判断できます。
本章では、手持ちアイテムの流用可否を分類し、購入すべき装備の総額や予算別の揃え方についてお伝えしましょう。

規格で切る流用判断|ヘルメットは可、ジャケットは条件付き、ブーツは不可

オンロード用装備の流用判断は、各アイテムが取得している安全規格で見極めてください。

アイテム 流用判断 安全規格 理由・条件
ヘルメット JISなど 公道走行の法的要件はオンロードでも林道でも同じ
ジャケット 条件付き EN 1621 打撃を受け止めるCE規格パッドが入っていること
ブーツ 不可 EN 13634 靴底の横方向への剛性や靴筒の高さが他の靴にないため

実際に安全長靴などで代用した結果、「足の甲が一切守られていない」との不安から、結局専用ブーツを買い直した失敗談もありました。

カテゴリ別の実勢価格帯|2026年8月15日にメーカー公式で確認した金額

これから揃えるアイテムの価格について、まずは全体像を把握してください。
2026年8月15日時点で、各メーカーの公式ページ等で確認できた実勢価格帯は以下の通りです。

アイテム 価格帯
ヘルメット 67,100円〜81,400円(※今回確認できた公式価格の範囲)
オフロードブーツ 23,100円〜46,200円
胸部・背中プロテクター 12,980円〜17,600円
ニーシンガード(膝プロテクター) 9,020円〜19,800円
グローブ 6,490円〜8,690円
オフロードジャージ 5,500円〜7,920円
オフロードパンツ 15,950円〜22,000円
シートバッグ 17,050円〜25,080円
車載工具類 3,080円〜5,940円

上記は確実な正規品の金額ですが、すべてを最初から最高級品で揃えようとすると数十万円が軽く飛んでしまいます。
自分の予算に合わせた最適なプランを検討しましょう。

予算レンジ別3プラン|最小構成・標準構成・こだわり構成で何が変わるか

総額のイメージをつかむため、予算別の3プランを作成しました。
すべて新品で揃える場合の目安として活用してください。

プラン名 総額の目安 購入アイテム 特徴・おすすめ
最小構成 約5万円 ブーツとプロテクター(膝・胸部)。他はオンロード用を流用 出費を最小限に抑えたい場合におすすめ
標準構成 約10万円 最小構成+林道用グローブ、オフロードジャージとパンツ、車載工具 一般的な林道ツーリングを楽しむのに十分な装備
こだわり構成 約18万円〜 標準構成+オフロード専用ヘルメット、専用シートバッグ 最初から完全なフル装備向け。長距離や過酷な環境にも対応

カネの掛けどころのメリハリ|ジャケットは削れてもブーツは削れない

予算を抑えたい場合でも、削ってはいけない部分と削ってもよい部分があります。

削ってはいけないのは、転倒時に最も怪我をしやすい足を守るオフロードブーツと、死亡リスクに直結する胸部プロテクターです。
ブーツとプロテクターは安全に直結するため、予算を割いてでも良いものを選ぶべきポイントと言えます。

削ってもよいのはウェア類です。
趣味程度の林道走行であれば、専用のオフロードウェアではなく、数千円の安価なジャケットの中にプロテクターを着込むスタイルでも十分に対応できます。
転倒して破れたり汚れたりすることを考えると、ウェアは「汚れてもいい、洗える、速乾性が高い」といった実用性を重視してコストを抑えるのが賢明でしょう。

買わないという選択肢|段階購入・工具の役割分担・レンタルの確認先

最初からすべての装備を買い揃えなくても、林道デビューは可能です。

一つ目の選択肢は、段階購入です。
今月は最も重要なブーツと膝のニーシンガードだけを購入し、残りの装備は次の給料日に回す買い方で構いません。

二つ目の選択肢として、工具の役割分担が挙げられます。
パンク修理キットなどの工具は、グループ全員が同じものをフルセットで持つ必要はありません。
一緒に走る友達と役割分担をすれば、個人の出費を大幅に減らせるため。

三つ目の選択肢は、レンタルの活用です。
オフロードバイクのレンタルショップや、林道ツアーの主催者によっては、ブーツやプロテクターを貸し出している場合があります。
一回だけ林道を試してみたいと考えているなら、まずはショップやツアー主催者にレンタルの有無を確認してみてください。

装備では埋まらないリスクと、0円でできる最重要対策

装備では埋まらないリスクと、0円でできる最重要対策 の要点

あご紐を締めるだけで変わる|頭部損傷死者の40%でヘルメットが離脱

高価なヘルメットを買っても、あご紐を締めなければ本来の性能は発揮されません。
1円もかけずにできる、最も費用対効果の高い安全対策がこのあご紐の確認です。

警察庁のデータによれば、頭部損傷死者856人のうち342人のヘルメットが事故時に外れていました。
これは令和3年から7年までの合計値で、約40パーセントに相当します。
被っていてもあご紐が緩ければ意味がないことを示しています。

警視庁が実施した3,344人規模の街頭調査では、あご紐の不適正着用が22.9パーセントにのぼりました。
特に半キャップ型のヘルメットでは、不適正率が34.3パーセントと最も高くなっています。

同調査では、過去3年の二輪車乗車中死者全体のうち約25.4パーセントでヘルメットが脱落していたことも報告されています。
この数字は先ほどの頭部損傷死者を母数とした40パーセントとは基準が異なります。
母数は異なりますが、いずれにせよ非常に深刻な事態です。

JIS T 8133という規格にも、保持装置であるあご紐の強度や脱げにくさが性能要求として明記されています。
規格が守ろうとしている安全を、着用者の不注意で無駄にしないことが第一歩だと僕は思います。

そもそも入っていい道か|林道は道路法の「道路」ではないという前提

装備の前に、走ろうとしている林道がそもそも入っていい道なのかを確認する必要があります。
既設林道の総延長は令和5年度末で14万キロメートルを超えますが、すべてが走れる道ではありません。

林道は道路法上の道路には該当せず、林業などの特定の目的で作られた道です。
警察庁の通達でも、林道管理者が一般交通に供するか否かを常時判断できるとされています。

例えば神奈川県では、林道の通行は原則として林業関係者や緊急車両等に制限されると明記されています。
この制限車両には自動二輪も含まれており、勝手に入っていい場所ではないことがわかります。

事前の情報収集を怠り、通行止めのゲートを無理に越えるような行為は厳に慎むべきです。

30cmの落差で詰む|100kg超のバイクは1人で引き上げられない

どれほど立派な装備を揃えても、山奥で一人で身動きが取れなくなればそれで終わりです。
林道ではわずか30センチメートルの落差に落ちただけで、自力での復帰が不可能になることもあります。

100キログラムを超えるバイクを、足場の悪い谷底から一人で引き上げるのは現実的ではありません。
車両重量が141キログラムあるCRF250Lでさえ、転倒したら一人では引き起こせないという体験談もあります。

電波の届かない場所でトラブルに遭えば、助けを呼ぶことすらできなくなります。
さらに、厳重なゲートで道が塞がれていたり、道そのものが消失して行き止まりになったりすることもあります。

参考にした動画では走れていた道が、わずか3ヶ月で深い轍や崩落箇所に変わっていたという事例もあります。
林道の状況は日々変わるものであり、事前の情報が常に正しいとは限りません。

また、山道に入る前の満タン給油は鉄則です。
確実な地図がない林道でのガス欠は、そのまま帰還不能という最悪の事態に直結します。

技量の8割で走る|熱中症・水分携行・ロードサービスの適用範囲

林道ツーリングでは、常に自分の技量の8割程度に抑えて走ることが基本とされています。
残りの2割の余裕を持たせておかないと、突然の路面変化やトラブルに対応できません。

特に夏場は、プロテクターで全身を覆った状態で激しく動くため熱中症のリスクが跳ね上がります。
こまめな水分補給が必須であり、ハイドレーションなどを活用して十分な水分を携行することが大切です。

激しく転んだりバイクを起こしたりと、林道走行は予想以上に腰への負担がかかります。
腰痛を防ぐためにキドニーベルトの導入を検討するのも良い選択だと僕は考えます。

万が一のトラブル時に、ロードサービスが未舗装路や林道まで来てくれるかどうかは事前に確認が必要です。
保険やサービスの加入先に連絡し、どこまで対応可能かをあらかじめ把握しておきましょう。

最後に、林道走行は極限環境における身体的安全に関わる行為です。
本記事の情報はあくまで目安であり、実際の走行前には必ず専門家やショップの助言を仰いでください。

次の一歩|試着する、1〜2点買う、一緒に走る相手を見つける

この記事を読んだあなたが次に取るべき行動は、実店舗へ足を運ぶことです。
まずは林道で履く予定の厚手ソックスを持参し、ブーツとニーシンガードを試着してみてください。

最初からすべての装備を完璧に揃える必要はありません。
今月はこの最も重要な1点か2点を購入し、残りは次の機会に揃えるという段階的な買い方でも大丈夫です。

そして何より重要なのは、一緒に林道を走ってくれる相手を見つけることです。
装備でカバーできるリスクには限界があり、一人で山奥に行くのはあまりに無防備です。

装備を整え、情報を集め、友達を作ってみんなと一緒に走る。
これが、林道ツーリングを安全に楽しむための唯一の正解だと僕は確信しています。

参考文献

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